産業医|裁判で敗訴した大阪の事件

大阪地裁

産業医|病人に暴言を吐き慰謝料の支払命令

平成23年10月26日付の読売新聞によると、奈良県に住む40歳代の団体職員Aさんが、
自律神経失調症で休職中、
産業医に「病気でなく甘えだ」などと言われ病状が悪化したとして、

当時の産業医に530万円の損害賠償を求めた大阪地裁での判決内容です。

自律神経失調症とは

ちなみに、自律神経失調症の症状は、めまい、冷や汗が出る、体の一部が震える、緊張するようなところではないのに動悸が起こる、血圧が激しく上下する、急に立ち上がるときに立ち眩みが起こる、朝起きられない、耳鳴りがする、吐き気頭痛、微熱、過呼吸、倦怠感、不眠症、生理不順、味覚障害といった身体症状から、人間不信、情緒不安定、不安感やイライラ、被害妄想、鬱状態など精神的な症状が現れることも多い。(引用:ウィキペディア

寺元義人裁判官は、

安易な激励や、圧迫的突き放すような言動は、病状を悪化させる危険性が高く避けるべきで、
産業医としての注意義務に違反した」と述べ、産業医に慰謝料など60万円の支払いを命じた。

判決によると、男性は2008年6月から同失調症で休職。治療で復職のめどが立った後の同年11月、産業医との面談で、

「病気やない、甘えなんや」「生きてても面白くないやろ」
「薬を飲まずに頑張れ」などと言われ、病状が悪化。復職の予定が約3か月遅れた。

この産業医は内科が専門で、裁判で

「励ましの言葉をかけることはあったが、詰問や人格を否定するような発言はしていない」
と主張。判決で寺元裁判官は

「産業医は心の健康への目配りを通じて労働者の健康管理を行うことも職務だ」
と指摘。

同失調症を「うつ病などとの関連性が考えられる」とし、慎重な言動の必要性に言及した。この産業医は昨年3月、団体での勤務を辞めたという。


本件は産業医のみが訴えられた国内初のケース

本事件は、企業ではなく、産業医のみが、裁判で訴えられ、しかも敗訴したという、おそらく国内では、初めての判例となる事件です。

「生きてても面白くないやろ」という暴言は、完全に異常な発言であり、医師の以前に人間としても、極めて問題がある。一方、自律神経失調症という病名は、どんな人でも日々感じることが多い症状(反応)であることから、医師によっては病状が軽ければ「病気の範囲とせず、治療をしない」という人も多い。しかし、その状態が長く続くのであれば、「うつ病」などの別の病気を疑うことが一般的ではないだろうか。産業医が「甘えや!」と怒鳴ったり、「薬を飲むな!」なんて言動をはたしてするだろうか。普通は絶対にありえない。

結果は、この社員に対し、大きなストレスを与え、復職時期を遅らせた原因をつくった。という責任を一部負担する意味で慰謝料の60万円の支払い命令となった。本事件は、請求額530万円に対し、支払決定額60万円と、軽い金額に留まった理由は、本人の側にも問題がないわけではないからだろう。裁判費用などを考えると勝訴と喜べるかどうかは、正直微妙である。現在も同じ会社で働いているのだとすれば、本人も後味の悪い裁判だったのではないかと推測する。

産業医に対する誤解

通常、医師は皆、特に病状説明の際には、患者に出来る限りストレスがかからないように、最大限の配慮をし、慎重に言葉を選びながら話をする。若い頃からものすごい訓練を受けている。私には、本事件は異例中の異例であり、このような医師が本当に実在しているのだろうかという印象です。

産業医は、病気と仕事のバランスを診断し、ドクターストップの要否を判定することが仕事です。

産業医面談では、「本人の希望(復職希望など)」が通らないことが、実際には多く有ります。その結果、産業医が敵視されたり、恨まれたりすることも知っています。一般的に、主治医は、日常の生活がおくれるレベルであれば、仕事への復職を勧めます。しかし、産業医は、実際の職場環境や受けるであろうストレスの強度を知っているため、主治医の診断よりも、常に、厳しい診断をすることが常となるのです。

本人の希望(復職)をかなえた場合に、もっと深刻な病気になる(再発を繰り返し、病気が治らなくなること)と診断しているから、希望が通らないことがあるのだと、この復職をテーマに悩んでいる人がいましたら伝えたいと思います。

 

 

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代表取締役 高橋 雅彦株式会社ドクタートラスト 代表取締役社長

投稿者プロフィール

1964年生まれ(52歳)1988年早大理工卒後、日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)に入行し、病院専門の融資課長などを経験。2004年同行退行と同時に、「医療」と「企業」を結ぶことを目的に「株式会社ドクタートラスト」を設立。社長に就任。現在12期目。趣味は五葉松の盆栽と休日のパンづくり。渋谷区松濤町会の理事を兼任。

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