業務による心理的負荷によって精神障害を発症した社員等が自殺した場合は、
10年程前から「労働災害」として認定されるようになり、認定件数も毎年増加しています。
<心理的負荷(長時間労働)> + <精神疾患> + <自殺>
の3つが重なった場合、企業側は、その責任を逃れることはできません。
企業のメンタル対策とは、
「心理的負荷」をどうやって引き下げるかにつきると思います。
精神疾患系の「労災」を防ぐためには、
①心理的負荷を取り除く工夫(職場環境の改善等)を行い、精神疾患を予防すること。
もしくは、
②不幸にも精神疾患になってしまた社員であっても、心理的負荷をかけない配慮
を続けていけば、「
健康状態が回復し、労働災害を避けられる」
と考えてみてください。
長時間労働=過重労働であり、週40時間を超える労働時間(残業時間)が、月80時間~100時間超となることをいいますが
(残業時間が毎日4時間超程度のレベル)、厳密に言えば、月45時間超の残業(36協定締結企業であっても)の実績があれば、該当する可能性があります。
(残業時間が毎日2時間超程度のレベル)
週40時間超の時間外・休日労働時間が
・月100時間超-------完全にアウト
・月80時間超---------(2ないしは6ヶ月間の平均で超えた場合)アウト
・月45時間超---------グレイゾーン (労働基準法違反のレベル)
精神疾患の発病前6ヶ月程度の期間内で、長時間労働の実態があれば(1ヶ月間でも)、長時間労働がメンタル不調の原因となったものとして、判定されています。
労働災害を防ぐためには、健康被害の可能性が高い労働者(=長時間労働者)が誰なのか、確認するところから始まります。
現在、労働安全衛生法の定めにより、80~100時間超の残業をした労働者については、企業の業種・規模を問わず、医師(一般には産業医)の面談を受けさせなければならないことになっています。
産業医による過重労働者面談は、
1人 5分~20分程度のものであり、
「通常勤務可」もしくは、「就業制限(残業禁止など)」「要休業」などの判定を行います。
過重労働者面談を実施すると、だいたいどこの会社でも、
自主的に(自分のために)「働いている方」と、上司の目が怖くて「働かされている方」に二分されるような気がします。
面談対象者(過重労働者)のうち、約8割の社員は、自主的に「働いている方」であり、社内での評価も高く、リーダー的な社員が多数を占めています。また、現時点では、病気とは無縁な印象を受ける元気な社員です。
しかしながら、約2割の方は、「働かされている」という印象や、発言があり、元気が無く、軽いうつ状態、帰宅拒否症候群、アルコール依存症など見逃せない症状が見られることがあります。
ノルマが大きすぎて達成が困難な状況になり、せめて誰よりも長時間会社で働くことで、少しでも評価を上げたい、成績を上げたいと考えているまじめな方が、精神疾患の予備軍になっています。
うつ病予備軍の社員は、精神面でのプレッシャーがあるにも拘わらず、産業医面談では「簡単には」その状況を話してくれませんが、2回目、3回目の面談となり、産業医への信頼感が生まれて来た段階で、初めて、身体的な変化(夜眠れない、深夜に目が覚める、悪夢をみる、頭痛・肩こりがする、食欲・性欲がなくなる、仕事の能率が落ちる、etc)について相談してくれるようになります。
身体的な変化等を、産業医にご相談頂けるようになった段階では、すでに病状としては、相当悪化しているケースが多く、日ごろから、産業医と気軽に話が出来る環境を整えておく必要があります。
精神疾患は、早期発見と早期治療の開始が鉄則であり、原因となるストレスを遠ざけて、ゆっくりと休養しなければならない病気です。
! 人事総務の責任者はご注意下さい。
過重労働者の8割が「元気」な社員であるなら、過重労働者面談を毎月やらなくても大丈夫だと考えてしまいがちですが、うつ病等を発症した社員の大半は、少し前までは「元気な」過重労働者だったはずです。
過重労働者面談を軽視して実施しないでいると、悪質であると労働基準監督署から指摘された場合、人事総務の責任者(個人)が、司法処分されることがありますので、注意が必要です。
社員の専属産業医を除き、ほとんどの産業医は「社外の専門家(医師)」という立場です。
産業医は、労働安全衛生法第13条3の定めにより、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告ができる権利を有しています。
産業医は、医学的な見地から、労働者の「就業制限」(ドクターストップ)の勧告や、「労働環境」改善などを勧告しますので、事業者は、その勧告を受けたときは、尊重しなければならない義務(法第13条4)があります。
病気による社員の就業制限(休業や残業禁止)等は、専門家とは言えない人事総務担当者が決めるのではなく、
必ず、医師である産業医のアドバイス(勧告)を聞いた上で、人事総務部門が決定するように社内ルールを制定しておきましょう。
社員の病状(特にメンタル面でのご相談)については、
①生命の危険、健康悪化の可能性がある場合を除き、(医師の判断による)
②原則、
ご本人の同意がない限り、会社側に知られたくない情報を会社側に報告
することはありません。
就業制限が必要だと産業医が判断した場合、産業医面談時に、対象社員との間で、「健康を取り戻すためにどうすべきか」、ご本人の意思を尊重した上で、改善策についてアドバイスを行います。
サラリーマンにとって、「精神疾患」というレッテルを貼られることは、人生最大の挫折であり、将来への不安感、失望感などは、想像以上に大きく、決して元気な方が理解できるものではありません。出来る限り、ご本人の意思を尊重した上で、直属上司・所属部長や人事総務部門のご担当者がご対応下さいますようお願い致します。
人事総務部門において、社員の皆様には、産業医は「個人情報」を守秘する義務があることをお話の上、ご自身の健康について、「何でも気軽に相談ができる」という環境を整えてください。
厚生労働省が定めた「労働者の心の健康の保持増進のための指針(H18.3.3付)」(PDF:15P)を、ご一読ください。
1.衛生委員会等での調査審議を実施しましょう。
「心の健康づくり計画」の策定やメンタルヘルス対策の実施体制を整備し、産業医面談の対象者の選出方法や、休職・復職に関するルールづくりなど、具体的な実施方策や個人情報の保護に関する規程、就業規則の改定、休職・復職審議委員会の設置等、衛生委員会を開催の上、その機能が生かせるように、十分に調査・審議を行ってください。
2.心の健康づくり計画を策定しましょう。
① メンタルヘルスケアを積極的に推進する旨の事業者の表明
② 事業場における心の健康づくりの体制の整備
③ 事業場における問題点の把握及びメンタルヘルスケアの実施
④ メンタルヘルスケアを行うために必要な人材の確保及び外部機関等の活用
⑤ 労働者の健康情報の保護
⑥ 心の健康づくり計画の実施状況の評価及び計画の見直し
⑦ その他労働者の心の健康づくりに必要な措置
3.4つのメンタルヘルスケアを推進しましょう。
① セルフケア
自分のストレスに気づき、病気にならないよう社員自身がセルフケアできるよう指導する。
自発的に②③への相談がしやすい環境づくり。
② ラインケア
管理監督者に対し、部下の過度な疲労蓄積・長時間労働をさせていないかなどを管理させ、
社員の心の問題の予兆に気づき、不調者が出た場合の社内ルールなどを制定し、指導する。
③ 社内の産業保健スタッフケア
社内ルールを制定し、セルフケア、ラインケアを支援する活動を主に実施する。
産業医、衛生管理者、保健師、心の健康づくり専門担当者、人事労務管理スタッフなど
労働環境の調査把握と改善策の審議実施、衛生教育・研修の実施、各種相談窓口
④ 社外の専門スタッフケア
③を実施する上で不足する分野での社外の専門家を活用しましょう。
精神科病医院、精神科医などとのネットワークを構築しておきましょう。
メンタル不調者の産業医面談は、原則、毎月実施することが基本です。
この面談は、経過観察とも呼ばれるもので、先月と比べて、今月は病状が悪化したか、回復したか、また、治療薬の変更の有無などの確認を産業医からヒアリングします。
面談時には、産業医から病気回復のためのアドバイスや、原因となっているストレッサー(ストレスをかける人)との関係、仕事量などを聞き、原則、ご本人が希望する職場環境に近づけるために必要な会社側への配慮などの希望を聞いた上で、人事労務担当者と打ち合わせを別途実施の上、必要があれば、会社側への協力依頼などを行っていきます。
また、就業制限(残業禁止、2時間以内/日など)は、適宜、見直していく必要があり、通常は、産業医の次回の訪問の際に、就業制限の一部解除、全部解除もしくは新規設定などを、産業医の指示に基づき実施します。
ただし、本人が面談を嫌がる場合、休職期間中などで、会社に出社できない状況の場合は、面談を強制してはいけません。
あくまでも、本人に、病気を回復したいという意思があり、そのために必要なアドバイスを産業医から受けたいと希望する時に限ります。
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